国土交通省が、高速道路の料金所をETC専用にする方向で検討していることがわかった。
高速道路の料金所には、現金で支払う有人のブースと無人のETCがあり、現在、ETCの利用率はおよそ93%に達している。6月27日までに料金所の係員9人の新型コロナウイルスの感染が確認されていて、国交省によると、新型コロナ対策の一環として、有人の料金所を減らし、ETC専用化を検討するという。
現金しか利用しない人や、ETCを使えない人などへの対応が課題となる。
国交省は今後、ETC専用化の時期や手順などを策定していく方針。
FNNプライムオンライン「高速ETC専用化を検討 現金利用者の対応など課題も」(2020.7.3.6:20AM) ※元記事はこちら
コロナウイルス感染者が料金所の職員の間で確認されたことを受けてか、もしくは、キャッシュレス決済の範囲拡大を見据えてか、高速道路のETC専用化が検討されていることがわかりました。
引用記事の中にも触れられていますが、現在のETC利用率は実に93%に達していることからも、専用化のハードルが少し下がってきているのもうなずけます。
下記は、国土交通省が公表しているETC利用率です。
平成6年度に建設省と道路四公団が共同で研究開発がスタートしたETC。
その後平成9年度からETC車線の交通運用の安全性と円滑性を確認するための試験運用が小田原厚木道路の小田原料金所と東京湾アクアライン木更津金田第一(本線)料金所で開始されました。
その後幾度もの試験運用や意見募集などを繰り返し、平成15年度にほぼ全ての料金所にETCレーンが整備され、本格運用が開始されています。
(※参考:NEXCO東日本「ETCの開発の歴史を教えてください」)
上の表を見る限りだと、本格運用のたった4年後(平成19年3月)にはETC利用台数は525万台/日となり、利用率は65.9%と過半数となっています。
その後も着々と利用台数は増え続け、平成28年11月には90%以上となり、現在は93%ということですね。
目次
高速道路ETC専用化の課題
高速道、クレカ非保持の対応検討 ETC専用化で国交相
赤羽一嘉国土交通相は3日の記者会見で、高速道路のETC専用化に向け、クレジットカードを持たない人への対策を検討する考えを示した。専用化されると、現金払いでは高速道路を利用できなくなってしまうためで「大変重要な論点だ。必要な対応を検討する」と述べた。
国交省は、料金所の現金払い向け有人ブースの廃止を進め、ETC専用への完全移行を目指している。
料金所係員とドライバーが現金をやり取りするとコロナ感染の恐れもあり、赤羽氏は「新たな生活様式の観点から(専用化を)議論していく」と説明。
一方、ETCはクレジットカード会員向けに発行されるカードを使うのが一般的だ。
共同通信 「高速道、クレカ非保持の対応検討 ETC専用化で国交相」2020/7/3 12:52 (JST)7/3 14:57 (JST)updated より。※元記事はこちら。
「ETCはクレジットカード会員向けに発行されるカードを使うのが一般的だ」とありますが、ETC専用化した場合、高速道路を利用する人全員が何らかのクレジット機能を有するカード及びETCカードが必要になるわけですが、果たしてどのくらいの割合の人たちがクレジットカードを保有しているのでしょうか。
JCBによる、クレジットカードに関する総合調査(2019)によると、クレジットカード保有率は85%となっていました。
高速道路をETCで利用している割合は90%を超えているのに、クレジットカードの保有率と比べると話が合わない・・・
と思いますが、これは高速道路を全国民が使っているわけではなく、業務で使っている会社名義のETCを使用していたり、持っている人が何回も使ったりということも考えられるので、数字が合わないわけですね。
課題① 事情があってクレジットカードを持てないケースがある
ここまで見てみると、1つ目の課題が浮かび上がってきます。
それはクレジットカードの保有率からわかるのですが、およそ15%の人がクレジットカードを持っていないということですね。
もちろん、この保有率調査は「自動車の運転をする人」を対象にしたわけではなく、無作為で選ばれた人たちを対象とした調査なので、クレジットカードを持っていない15%の中には免許返納した高齢者など免許を持っていない人も含まれています。最近は免許を持っていない若い人も増えていますからね(少し寂しい気持ちになりましたが)。
クレジットカードは信用を基に成り立っていますから、支払いを延滞している人や債務整理、自己破産などをした人には作成できません。
また、今回のコロナの影響で事業が停滞して自己破産する人なども増える可能性がありますから、よりいっそうカード普及率が横ばいになる可能性があるわけです。
また、中には完全現金主義でクレジットカードを持たない人もいます。
そうした各個人の事情が関わってくるので、ETC専用化を実施した場合、少なからず不便に感じてしまう人も存在します。
課題② 雇用が減ってしまう可能性もあるのでは?
料金所の職員は、ETCの普及と同時に各料金所に最低人員を配置する動きが進んでいるようです。
しかし、料金収受業務が無くなったとしても、ETCの監視や各種装置の監視、トラブル対応などの要因としてある程度の人員は必要かと思われます。
ですがその最低人員は少なくとも現時点でもいるはずなので、直接の料金収受が無くなってしまうとある程度の人員は必要なくなってしまうのでは無いでしょうか。
そうすると、雇用が機械に奪われてしまう可能性がありますよね。
その点についても、しっかりと見つめていかなくてはならない課題となりうることでしょう。
課題③ ETC車載端末(車載機)は決して安くない
ETC専用化した場合、クレジットカードを作成しなくてはならない人が増えるのはもちろんですが、さらにETC車載機を各車両に導入せねばならず、導入コストが多少なりともかかってしまうのも課題です。
国が「専用化」を進めるのであれば、そういった費用負担はどういう形にするのか。ETC利用だと割引が適応されるので、そう言った形で恩恵があれば全員公平になりますね。
そう言ったところを国が多少補助をしてくれるのかと言ったところも論点となることと思います。
ですが、現時点で車載端末を導入している車両はたくさんありますから、今後取り付ける場合を補助してしまうと不公平にもなってしまいますから、難しい課題となりそうです。
課題④ ETCが実装されていない道路もある
時々、遠くまで外出していると、「現金専用」という自動車道を通ったことがある人もいるのでは無いでしょうか。
高速道路から直接乗り入れできるのに、ETC対応していない(回数券なんかの利用を促すところもある)料金所がありますよね。
あれらは実は「一般道路」の区分となっており、多くは自治体が所有しているケースとなっているので、今回の「高速道路ETC専用化」からは漏れると予想されます。
この類の一般道路(有料)は採算が取れていないケースが多く、ETC設備を導入する設備投資すらできないところが多いので、ETC専用化を一方的に押し付けることは難しいと思われます。
今後は全てキャッシュレス決済が進む
さて、今回は高速道路ETC専用化とその課題について少し調べてみました。
今後は様々なシーンでキャッシュレス決済が進んでいくでしょうし、今回のコロナに関わる新しい生活様式でも取り入れられているので、さらにキャッシュレス決済が加速していくことと思われます。
○○ペイなどが浸透し、カードすら持たずにキャッシュレス決済が可能になっています。
時代はどんどんと進んで行きますが、確かな目と耳で情報を掴み、情報セキュリティにも気を配って行かなくてはいけませんね。