本当のエアコンの最適温度

ようこそ、マネーブリスへ。

今回はエアコンの室温設定について調査しました。

と言うのも、とても興味深い記事を見つけたからなんですが、姫路市役所で冷房使用時の室温設定を変えて実験したところ、面白い結果が出たと言うのです。

室温設定25度で 職員の8割強「効率上がった」

兵庫県姫路市は7日、市役所本庁舎で冷房時の室内温度を25度に設定した7〜8月、総残業時間が14.3%減少したと発表した。
清元秀泰市長が定例会見で明らかにした。職員アンケートでも85%が「業務効率が向上した」と回答。働き方改革への効果があったとして来夏も実証実験を続けると言う。

 環境省は冷房時の室温目安を28度とし、全国の自治体も準じている。姫路市は「室温が25度から28度に上がると作業効率が6%低下する」との専門家の分析を基に、7月16日〜8月31日、室温を25度にして職員の労働環境への影響を調べた。

 同市人事課によると、前年7〜8月との比較で職員1人あたりの月平均残業時間が21.6時間から18.7時間に減った。業務効率を選択肢で訪ねたアンケートでも、「とても向上した」と「少し向上した」とで計85%を占めた。

 光熱費は前年から約7万円増えたが、残業時間減少で人件費は約4千万円削減された。清元市長は「経済効率が高いことも裏付けられた」とする。温室効果ガスの排出量も微増にとどまったと言う。

 同市は、気候や業務量の変動を踏まえ、来夏も実証実験として継続し、データを積み重ねる方針。出張所や衛生センターなどの出先機関にも対象施設を広げると言う。(小川 晶・神戸新聞より)

(原文ママ/元記事:「室温設定25度で職員の8割強『効率上がった』」神戸新聞より)

 何かとお堅いイメージの強いお役所がこのような実証実験をすると言うのは素晴らしいですね。


 ちなみに、姫路市の清元秀泰市長は医師のようです。

 東北大学で大学教授を務めていた時代に東日本大震災が発災。その際は被災地で率先して医療的支援を施したそうです。今年5月にニュースになった、たまたま居合わせた心肺停止状態の人に救命措置を施し一命をとりとめたと言うニュースもまだ記憶に新しいですね。


 環境省によると、クールビズとは室温28度でも快適に過ごせる軽装や取り組みを促すライフスタイル、と定義しています。

 この「28度」と言う設定温度には諸説ありますが、ほとんど根拠が無さそうなのが実のところ。

なぜ、28度設定とされた?

 28度設定の根拠を調べていると、どうやら1970年(昭和45年)に制定された「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」の管理基準温度の上限だから、と言うのが可能性が高いです。この法律では、環境衛生管理基準として温度を17℃〜28℃と定められています。

 ですが、この法律の17℃〜28℃と言う部分で注意しなければいけないのが、「エアコンの設定温度では無い」と言う点です。この温度はあくまでも「実際の居住域の温度」になります。

 エアコンの制御方法や室温センサーなどにもバラツキがあるので、28℃設定=室温28℃とは言えません。

 建築物衛生法が制定される際の基礎となった資料は厚生科学研究費「ビルディングの環境衛生基準に関する研究」ですが、この報告書の中で28℃とされた理由に関しては理想値、目標値や推奨値ではなく、許容最低限度の上限値であると記述されていますから、28℃設定を推奨するのは間違っていますよね。ちなみにこの報告書では、冷房ありの場合の推奨値は22〜24℃とされています。

(参考文献)
 大澤元毅:「建築物環境衛生管理及び管理基準の今後のあり方に関する研究(H23)国立保健医療科学院、2013年
 公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター:「改訂 建築物の環境衛生管理(上巻)」

我慢をしない省エネをとことん研究した論文がある

 今回のエアコンの設定温度についてですが、「夏季オフィスの冷房に関する提言」と言う名目で報告論文があります。これには、あらゆる視点から夏場のオフィスを研究し、職場環境の改善のヒントを得られる情報が満載です。

 今回の記事もこの報告書の多くから参考にさせていただいています。

 全てはご紹介できないので、ぜひ興味のある方は読んでみてください。

 『我慢をしない省エネへ
   〜夏季オフィスの冷房に関する提言〜 報告書』(2014年4月24日) 空気調和・衛生工学会  温熱環境委員会(重点研究)

 報告書はこちら

節電だけが省エネじゃ無い

 今回、姫路市の取り組みでは電気代が数万円上昇した反面、人件費は4千万円削減できたとしています。

 光熱費はとても簡単に節約できるので誰しもが行うことですが、その効果は意外と少ないです。

 28℃設定にしておけば数万円は削減できたわけですが、逆手にとって温度を下げて作業効率を上げたことで、光熱費は上がってしまったが人件費は何千倍も削減できた。

 人件費も光熱費も税金から賄っている市役所ですから、この結果は大変大きいですよね。

 全国的にも同じような取り組みをすることで、全国的では莫大な人件費の削減になるかもしれませんね。