今回のコロナ騒動で休校が長引いている地域もあれば、通常通り登校し授業を進行している地域もあります。
日本全体で見ると、この地域差は大きく、イコール学力差と直結していきます。
そんな問題を解決でき、また、万が一休校が更に長期化した場合に有効なのが9月入学制度の導入ではないでしょうか。
すでにいくつかの自治体では9月入学制度の導入の提案・検討を開始しているところもあります。
新学期の開始は9月に 宮城県知事が新制度導入を提案(KHB東日本放送)
KHB東日本放送「新学期の開始は9月に 宮城県知事が新制度導入を提案」より
宮城県の村井知事は27日の定例会見で、臨時休校が続く学校の再開時期について「学校の入学、始業の時期を9月にずらすのも大きな方法。9月入学にすれば学力差が無くなる。今は学校をやっているところと、ずっと休校しているところでかなり学力差、地域格差が出ている」と述べ、新学期の開始を9月とする新たな制度の導入を宮城や広島など全国17県の知事でつくる会議で国に申し入れるよう提案する考えを示しました。9月新学期制は欧米などでは一般的な制度であることから、留学生の受け入れなど国際化にも弾みがつく有効な手段としています。
9月入学とは
日本は長年にわたって4月を入学時期としてきています。
しかし、海外では9月入学制度がとても多いです。
9月入学とは、6月に学年が終わり、9月に進級する方法です。
要するに学年の始期を秋季にし、学年と学年の間に夏休みを置くシステムです。
9月入学のメリット
9月入学制度を導入することで、メリットが多くあります。
これらは今思い浮かんだメリットですが、まだまだあると思います。
その反面、デメリットも当然あります。
9月入学制度に移行する年は少し大変だということがまず挙げられます。
また、4月の桜のシーズンが入学時期という我々日本人の感覚が、少し薄れてしまうことになるのも寂しい気がするかもしれませんね。
実は今まで何度も議論されている
実は9月入学制度は、以前から各地で議論がなされていました。
しかし、現在進行中の教育スケジュールを急に変更することは非常に難しく、タイミング的にも難易度が高いものがありました。
一部の大学などでは9月入学制度を取り入れていますが、4月入学も並行して行っているような状況です。
しかし今回は、休校期間が長引いた場合の救済措置として9月入学が実現可能なタイミングなのかもしれません。
4/30追記 9月入学、反対意見に対する提案
「9月入学」と言うキーワードが連日のようにメディアに取り上げられるようになり、様々な意見が飛び交っています。
こうした意見交換はとても良いことで、メリットとデメリットをそれぞれ浮き彫りにしてくれます。
今回は、9月入学反対意見について見てみます。(インターネット、各所の記事から抜粋、要点のみ記載)
② 9月にコロナウイルスが完全に終息しているとは限らない。よって、安全に9月に新学期を迎えられると言う徹底的根拠はあるのか。
③ 真夏の暑い時期に受験を受けなければいけず、ストレスになる。
④ 9月入学にするのではなく、オンライン授業の拡充を実施するべき。
⑤ 9月入学に移行したら留学生が増えるとは言うが、既に多くの大学で9月入学は可能になっているので、特に関係ないのでは無いか。
Yahoo!ニュースにて、「10代の学生から集まる『9月入学』反対の声」という記事がありました。とてもわかりやすくまとめられていて、素晴らしい意見があったので、ほぼそちらから抜粋しました。
※Yahoo!ニュース 引用元はこちら
まず初めに感動したのは、10代の子たちがこうしたしっかりとした意見を持ってくれていて、ちゃんと適切な部署へ意見を投げかけられていると言うことです。
ただ世の中の流れに身を任せるのではなく、こうして疑問を持ち、専門の大人へ相談ができると言うことは非常に大切なことですよね。素晴らしい!
さてさて、ニュースで取り上げられていた話はさておき・・・
それでは、反対意見を1つづつ見ていきます。
① 受験生に動揺を与える
→ これは本当にその通りです。
受験という、人生における大きな分岐点でこのような動揺は嫌ですよね。
本来ならば味わう必要の無い不安感ですから、受験生へ与える影響は計り知れません。
しかしながら、もし9月入学を試みるとしたら、いずれ、その時代の受験生が乗り越えなくてはならない壁になるのも事実です。
できるならば「20XX年から9月入学にします」と、何年も前からあらかじめ宣言されれば、受験生の動揺や各学生さんたちへの影響を最小限に抑えられるかもしれません。
ですが今回のように急な展開になってしまうと受験生への負担は大きくなってしまいます。
実は、受験生にとってメリットもあります。
学習カリキュラムにゆとりができるので、受験勉強のプランの幅が広がります。
また、9月入学制度を取り入れるとしても、しばらくの間は4月入学も並行して行うなどして、受験日程などを現行通り据え置く措置も取れます。
この場合、各教育機関の担当者は実務的に大変なことになりますが、受験生への影響は最小限に抑えらます。子どもたちのために、大人が踏ん張れるところかもしれません。
② 9月にコロナウイルスが完全に終息しているとは限らない。よって、安全に9月に新学期を迎えられると言う徹底的根拠はあるのか。
→ これは私の個人的予測ですが、おそらく9月にコロナが終息しているとは考えにくいです。もしかしたら落ち着きを見せているかもしれませんが、第2波や第3波の可能性も考えると、この先1年程度は「安全」の保証は結局のところできないと思います。
ですがいつまでも休校を継続するわけにもいきませんし、何ヶ月間も非常事態宣言を継続することもできません。
だからこそ現在すでに約2ヶ月間自宅待機となっている子どもたちの教育を最優先に考えて9月入学案が浮上しているのでは無いでしょうか。
最近、「9月入学を提案した高校生がSNSで話題」などと言われているので、あたかも高校生のつぶやきが独り歩きしているように捕らえられがちですが、実は9月入学はもっと何年も前から、政府内で検討・討議されてきていることなので、「思いつき政策」や「その場しのぎ」とは少し違った一面を持っていることもご承知おきください。
③ 真夏の暑い時期に受験を受けなければいけず、ストレスになる。
→ 冬が嫌な人もいるでしょうから、こればかりはどちらとも言えないかもしれませんね。
季節的な話をすると、
冬=インフルエンザ、積雪 が考えられますので、大切な受験当日に体調不良を起こしてしまい全力を出せなかったり、積雪の影響で交通機関が乱れて受験会場にたどり着くのが遅くなってしまったりと、様々な影響が考えられます。
とは言え、夏とてヘルパンギーナ(夏風邪)がありますし、風水害なども可能性があるシーズンですから、やはりどちらとも言えないかもしれませんね。
④ 9月入学にするのではなく、オンライン授業の拡充を実施するべき。
→9月入学を実行したとしても、オンライン授業の拡充は実施するべきだと思います(9月入学を実行しなかったらなおさらですが)。
海外ではオンライン学習が浸透しているところもあり、きめ細かい家庭学習のフォローアップができているところがあります。
こういった良いところはぜひ真似していきたいですよね。
ですが、オンライン授業を拡充させるためには、各家庭にそれなりの通信環境が整っており、スムーズなウェブ授業の閲覧等ができる環境が必要になるので、教育機関側だけの努力ではなかなか浸透していかない面もあります。
⑤ 9月入学に移行したら留学生が増えるとは言うが、既に多くの大学で9月入学は可能になっているので、特に関係ないのでは無いか。
→ 確かに9月入学(秋入学)を導入している大学は年々増えてきています。
平成10年代から続く調査などを見ても、平成後期(20〜)に入ってさらに増えています。
大学入学情報図書館RENA「秋入学募集グラフ(2019・秋)」によると、実施大学数は国立8校(10.1%)、公立3校(3.9%)、私立51校(11.6%)と、合計で62校(6.1%)です。
秋入学自体が大変珍しい制度だったにもかかわらず、ここまで実施校が増えているのは素晴らしいことですよね。
しかし、この「OO校」という数字で注意しなければならないのは、その学校の全ての学部では無いという点です。
私も海外の学校が長いので、日本国内の大学で秋入学を考慮した時期もありました。しかし、志望する大学が秋入学を募集していても、志望する学部が無かったことがほとんどでした。
同じく「秋入学募集グラフ(2019秋)では秋入学を受け入れる学部の数も記載がありました。
国立で29学部(非実施332学部)、公立で3学部(非実施172学部)、私立大学で88学部(非実施1,357学部)、学部合計で120学部(非実施1,861学部)です。
日本国内に764大学、2,307学部、5,146学科あることを鑑みると、上記の数がまだまだ物足りないと感じてしまいますよね。
※大学院は半数以上が秋入学可能です。
これを機にいろんなアスペクトで議論するべき
今回は反対意見を紹介させていただき、それに関する違った見方を紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。
もちろん、これは1つの意見であり、もっともっと議論を深める必要があると考えます。
今回、コロナという未曾有の危機と直面している私たちは、ある種の転換期にあると言えます。
だからこそいろんな人といろんなことを議論して、お互いに知見を深めていくことが望ましいですよね。
「流れに任せる」のではなく、「自分で考える」ことをしなければいけない時期にあると思います。
1) 諸外国と足並みを揃えることで、国境を超えた進学がスムーズにできる。
2) 1年で最も暑い時期を休みにすることで、学校側の冷房や子どもの健康管理など多くの負担を減らすことができる。
3) 帰国子女や外国人留学生などを受け入れやすくなる。
4) 4月入学に合わせて冬季に受験を実施しているが、入学が9月にずれれば入試時期もずらせる。そうすると、インフルエンザや風邪のシーズンを避けられる。積雪などによる交通機関の遅延なども受験に関わらなくなる。
5) 今回の休校期間で失われた学習時間を取り戻せる。
6) 十分な受験対策を講じることができるようになる。
7) カリキュラム編成が楽になる。
8) 夏休みの宿題が無いので、ボランティアや家族での時間などそれぞれの時間を有効に使えるようになる。自ら勉強や研究をするなど、自主性も育まれる。